デザイナーとして仕事をしていると、避けて通れないのが「修正対応」です。 しかし、中には「直しても直しても、次から次へと細かい指示が来て終わらない」という、いわゆる“修正地獄”のような案件に遭遇することはありませんか?
「自分のスキルが足りないからだ」と自分を責めてしまう人もいますが、実はその原因、もっと根本的な「仕事の入り口」にあることが多いのです。
今回は、実際に弊社内で起きた、ある「終わらない修正案件」について、やり取りを交えてご紹介します。もしあなたが、お客様の手足となって動くだけの「オペレーター」になりかけているなら、ぜひ読んでみてください。

西村さん、ちょっと相談させてください。今担当しているお客様なんですが、修正がものすごく多くて……。どう対応していったらいいのか、分からなくなってしまって。

うわ、これ実際の訂正紙? 真っ赤やな……。これ全部、出した構成に対しての赤字?

そうなんです。コンセプトが大きく変わったわけではないんですが、お客様の方で「ここの文章はこう変えて」「何センチまでを顔写真にして」「色を変えて」「一文字だけ変えて」といった細かい指示が延々と続いていて……。

なるほど。「何センチまで」って、すごい細かさやね。

はい。言われた通りに直しても、また微調整が入ってひっくり返されて。
終わる気配がないんです。素直に聞き続けるべきか、何か言うべきか困っていて。

正直に言うと、この状況に対する一番の改善策は、テクニック論じゃないねん。
「そもそも、この仕事を請けてしまったことが間違いだった」という可能性が高い。

請けたことが、間違い……ですか?

そう。このお客様が求めているのは、私たちが提供する「デザインによる課題解決」ではないんだよ。
お客様の頭の中にある「完成イメージ」を、文句を言わずにそのまま形にしてくれる「手」を求めているだけなんやと思う。
僕も昔、名刺のデザインで「1mmずらして」「やっぱり戻して」を繰り返して、修正バージョンが「vol.17」まで行ったことがあるから、気持ちは痛いほど分かる(笑)。

17回も……! まさに今の私がその状態です。
デザイナーとして提案している感覚はなくて、ただ言われたことを作業しているだけになってます。

だよね。でもね、これからの時代、そういう「言われた通りに形にするだけ」の仕事は、AIが全部やってくれるようになる。
「ここを何センチ下げて」と言えば、AIが瞬時に数パターン出してくれる時代が来る。
人間である私たちがやるべきなのは、そういう仕事じゃないはずやん?

確かにそうです。でも、ここまで進んでしまった案件、どう着地させるのが良いでしょうか?

ここまで来てしまったら、勇気を持って主張するしかないね。
「ご希望に沿うためにこれだけの修正回数と時間をかけていますが、これ以上は当初の予算とスケジュールでは対応しきれません」と。
もちろん、お客様は怒るかもしれない。「プロなんだから最後までやれ」って言われるかもしれない。
でも、このままズルズルと10回、20回と修正を重ねて、他の仕事ができなくなる損失の方が怖いよ。

お客様にそれを伝えるのは怖いですけど……でも、このままだと本当に終わらない気がします。

大事なのは、「仕事を受ける前の見極め」。
最初のヒアリングの段階で、「あ、この人は自分の中にあるイメージをただ作らせたいだけだな」という予兆は必ずあるはず。
その時点で、お断りする勇気を持つこと。
それが、自分を守り、ひいてはクリエイターとしての価値を高めることにつながるんだよ。

「断る勇気」も、プロとして長く続けるための大事なスキルってことですね。

そういうこと。修正対応のスピードが早くなるだけじゃ、デザイナーとして歳を重ねた時にキツイからね。
今回の件は、誠意を持って「ここから先は追加費用がかかる」あるいは「これ以上は対応が難しい」と伝えてみよう。それで怒られたら、それはもう仕方がない割り切りも必要だよ。

ありがとうございます。目先の対応に必死で、一番大事なことを見失っていました。
今の案件は誠意を持って相談しつつ、これからは「何のためにデザインするのか」を最初にしっかり握るようにします!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「せっかく頂いた仕事だから」と、無理な要望にも応えようとしてしまう気持ちは、とてもよく分かります。しかし、「何でも言うことを聞く」ことが、必ずしも顧客のため、そして自分のためになるとは限りません。
- 最初の段階で「オペレーター」を求めている顧客かどうか見極める
- デザインのプロとして、対等なパートナーとしてのスタンスを崩さない
- 時には「NO」と言う勇気を持つ
これが、長く、楽しくデザインの仕事を続けていくための秘訣です。
【今日からできるアクション】
現在抱えている案件の中で、「ただの作業」になってしまっているものはありませんか? もしあれば、次回の打ち合わせで「言われた通り」にするのではなく、「プロとしてどう思うか(提案)」を一言添えてみてください。そこから関係性が変わるかもしれません。


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