デザイナーとして歩み始めたばかりの頃は、何もないところからデザインを生み出すのは至難の業ですよね。過去の作品や参考デザインを真似ることからスタートするのは、成長の近道でもあります。
しかし、ある程度経験を積んでくると「自分はただ過去の焼き直しをしているだけではないか?」「自分の力で生み出していると言えるのだろうか?」という不安に直面することがあります。
今回は、弊社の駆け出しデザイナーの悩みから見えてきた、真似を卒業し、自分の価値を生み出すための「守破離」のマインドについてお伝えします。

西村さん、田村さん、少し相談させてください。1年目の頃は先輩の過去作を見てヒントをもらうのが当たり前で、それが成長に繋がると教わってきました。でも最近、自分でデザインを作るようになっても、つい過去のパターンに頼ってしまうんです。ふと「これってただの焼き直しじゃないか?」と怖くなってしまって……。

なるほど。それは多くのデザイナーが通る道だね。最初は真似をしないと何も思いつかないから、まずは型を覚えるのは正解なんだよ。最近はWebデザインでも「テンプレート」のような形が増えているしね。

実は私、1年目の頃は逆の考えだったんです。「同じものを作っちゃダメだ、自分だけのオリジナルを生み出さないと!」って意固地になっていて。でも今振り返ると、最初は徹底的に真似をして基本の型を身につけたほうが、成長はもっと早かっただろうなと感じます。

確かに。武道や芸道の「守破離」で言うところの、まずは型を「守る」フェーズは絶対に必要だよね。基本のルールをしっかり押さえる。そこから派生させていくのが「破」のステップなんだけど、ずっと参考資料をなぞり続けていると、自分で考える力が弱まってしまうリスクはあるね。

先日、GOグラデミーの講師である坂本さんのフィードバックをいただいた時、自分の限界を感じたんです。表現コンセプトに合わせてデザインのイメージサンプルをネットから探してきて、それを元に作ったんですが、「選んできたサンプルの方がエネルギッシュで躍動感があるよね」と言われてしまって……。サンプルを超えられないんです。

それは技術不足というよりも、マインドの問題かもしれないね。

マインド、ですか?

そう。サンプルを超えたいと思っているのか、それともサンプルという「正解」から外れるのが怖いのか。

……正直に言うと、外れるのが怖かったです。サンプル通りのパターンに収まっていれば「正解」な気がして、新しい要素を入れてバランスを崩すのが不安で、思い切ったことができませんでした。

その「外さない」という意識が、実は成長を止めてしまうこともあるんですよね。デザインの世界ではパクリは御法度です。参考にはするけれど、常に「これよりも良いものを作るぞ」「この要素を抜き出して、もっと効果的に見せてやるぞ」という悔しさや意志が大事なんです。

田村さんは常に「超える」ことを考えているから、結果的にオリジナリティが生まれているんだよね。一方で、「自分はテンプレートより劣っている」と自分を下に置いてしまうと、ただの作業になってしまう。

そうなんですね。

弊社の仕事でも、例えば診察券のデザイン修正作業みたいなものだと、あまり手応えを感じにくいかもしれない。でも、たとえ名刺一枚でも、自分なりに思考して一から生み出したものでお客さまに貢献できたとき、その手応えは「やめられないほどの自信」に変わるんだよ。

私も、小さな名刺のデザインですら「これ、前と同じじゃないかな?」って悩んで、すごく時間がかかってしまうことがあります。でも、その葛藤こそがデザイナーの仕事なのかもしれないですね。

私は今まで、外さないことが正しいと思っていました。でも、それだと「作業」をしただけで、自分が何かをしたという感覚が持てなかった理由が分かりました。これからは「守」の次は、勇気を持って「超える」ことを意識してみます。

そのマインドを持つだけで、デザインへの向き合い方はガラッと変わるはずだよ。まずは「ここだけはサンプルよりも良くしてやろう」という小さな一歩から始めてみよう。
まとめ
今回の対話から、デザインの「焼き直し」から脱却するポイントをまとめます。
- 「守・破・離」を意識する: 最初は型を守る(守)のは正しい。しかし、いつまでもそこに留まらず、自分の意思で型を破る(破)フェーズが必要。
- 「正解」への執着を捨てる: 参考資料を正解だと思い込むと、そこから外れるのが怖くなる。資料はあくまで「ヒント」であり、超えるべき壁だと捉える。
- 「超える」というマインドを持つ: 悔しさや「もっと良くしたい」という意志が、作業を「クリエイティブ」へと変える。
今日からできるアクション
次にデザインをする際、参考資料を横に置きながら自分にこう問いかけてみてください。 「このサンプルの良いところを一つ盗んで、それを超えるために自分は何をプラスできるか?」
ただなぞるのではなく、一箇所だけでいいので「自分なりの工夫」でサンプルを上回る。その小さな成功体験の積み重ねが、あなたを本物のデザイナーへと成長させてくれます。


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